人生100年時代といわれるいま一生おいしく食べる健やかな歯の育て方

政府が、国民の健康を守るために導入を検討している「国民皆歯科健診」が注目を集めています。「人生100年時代」といわれるいまだからこそ、できるだけ長く、自分の歯でおいしく食べ続けたいものです。歯科健診を受けるだけでなく、自分でもできるケアなどについて歯学博士の照山裕子先生にうかがいました。

医療法人はなぶさ会 理事長 歯科医・歯学博士 照山 裕子 先生
医療法人はなぶさ会 理事長
歯科医・歯学博士
照山 裕子 先生
『“食べる力”を落とさない! 新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)

日本大学歯学部卒業、同大学院にて博士号取得。現在、医療法人はなぶさ会理事長および東京医科歯科大学(顎顔面補綴外来)非常勤講師を務める。診療の傍ら文筆家としても活動、初の著書『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)がベストセラーに。近著に『“食べる力”を落とさない! 新しい「歯」のトリセツ』(日経BP)。メディアでの分かりやすい解説に定評がある。

―日本政府は「国民全員に歯科健診を義務化しよう」といった動きを始めています。なぜ、定期健診が大切なのでしょうか。

 「口の健康が全身の健康に直結している」という事実が、ここ何十年ものデータから分かってきています。高齢化が進むいま、長く健康で暮らすためには、「口内環境を整え自分の歯で食べられること」が重要になるのです。そのためには若いうちから定期的に健診を受け、気付かないうちに病気が進行して歯を失うことがないよう、早期に発見することが大切です。

―健診以外にも、自分の歯を守るためにどんな意識が必要ですか。

 みなさんには『お口の主治医は自分自身』と考えていただきたいと思っています。自分の口の状態を把握して必要なセルフケアを日々、心掛ける、そしてそのセルフケアが適切かをプロに確認してもらうのが「健診」という位置付けです。口の状態は個人差があるので、歯の大きさに合ったハブラシを使っているか、汚れが落とせているか、ケア方法は〝一人ひとりのオーダーメイド〟と思ってください。そして日々「いま、口の中はキレイかな」と意識することも大切です。

―さまざまな病気の原因にもなるといわれる歯周病。どんな病気ですか。

 歯周病はむし歯と違って自覚症状がない場合が多く、知らない間に進行するため、「沈黙の病」といわれています。磨き残しがあると、体はそれを排除しようと毛細血管を張り巡らせて免疫細胞を送り込みます。歯ぐきが赤く腫れるのは、敵がいると教えているサインなのです。病状が進むと食物が触れただけでも血管が破れ出血しますが、そこから細菌や毒素が流れ込み全身を回るというのが歯周病の怖い点。血管壁にコブを作れば動脈硬化につながりますし、あらゆる病気を悪化させる可能性が解明されつつあります。全身の健康のためにも、口の健康を見直しましょう。

―歯ぐきの変色や下がりは、年をとったらあきらめるべきですか。

 歯ぐきの状態は90歳でも若々しい人もいれば、20歳でも老化している人もいます。その原因は歯周病や喫煙などの生活習慣が関係しています。歯ぐき下がりはむし歯や知覚過敏のリスクも上がるので、まずはその原因をクリニックで診断してもらうことが必要です。原因次第で治療が可能か、セルフケアで改善できるかが分かるので、早めに対処しましょう。

―歯の健康は女性ホルモンにも関係すると聞きます。 

 ホルモンのなかでもとくに女性ホルモンが歯周病とかかわりが深いという研究データがあります。ある種の女性ホルモンを好む細菌がいて、ホルモン濃度が高まる時期は細菌が増殖して歯周病リスクが上がり、生理周期に合わせて歯ぐきが腫れて出血する人もいます。自分の口の中をよく観察して、歯ぐきの腫れの改善ができるハミガキ剤を使ったり、フロスをやさしく使ったりするなど、体調の変化に合わせたケアもしましょう。

―「食べる力」を落とさないためのお口全体のケア方法を教えてください。

 「食べる」とは単に歯でかみ砕くだけでなく、口の筋肉や唾液、舌の力も総合的に使って咀嚼して飲み込むまでを指します。この力は年齢とともに衰えていきます。唾液の量も減ってくるので、意識して口周りを動かし、唾液を出すことを心掛けましょう。また、舌や頬の筋力をキープするためには、口を大きく動かすだけでも役立ちます。簡単な方法としては、水を含んで、高速で口をぶくぶくとゆすぐ「毒出しうがい」があります。

―そのほか、日常的に歯を守るためにできることはありますか。

 食ベカスなどの汚れは、時間が経つと歯垢になります。普段から口内に汚れを残さないことが大切。スムージーや野菜ジュースなどの甘いドリンクは液体でも汚れが残るので、飲んだらゆすぐ習慣をつけましょう。一生食べられる口をキープするためにできることはたくさんあります。まずはセルフケアと定期的な健診を心掛けていきましょう。
大人も子どもも笑顔で通える一人ひとりの口に寄り添うクリニック 照山先生が理事長を務める「医療法人はなぶさ会」は、歯の病気の治療はもちろん、予防治療の指導、インプラントやマウスピース矯正、美しい歯並びやかみ合わせの改善も含めた、口腔内全体の環境を整える治療も行っています。照山先生の専攻である顎顔面補綴学(被せ物や入れ歯など)に関しても相談可能。無料で利用できる保育士による託児所を設置し、食育教室も行っており、安心して親子で診療を受けることができます。照山先生の診察をご希望の方は、診察日をクリニックに確認ください。 医療法人はなぶさ会(すずらん歯科 矯正歯科) [診療科目]一般・小児歯科のほか、インプラント、マウスピース矯正、補綴治療、小児矯正、予防処置。歯のクリーニングルームも完備
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