順天堂大学医学部教授・小林メディカルクリニック東京
医師 小林 弘幸 先生
順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。国内における自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手などへのコンディショニングやパフォーマンス向上指導を行う。著書に『免疫力が10割――腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)など多数。
―免疫は、どのように体を守っているのでしょうか。
免疫とは、体に入り込んだ病原体やウイルス、細菌などの異物を見つけて、体から取り除く自己防衛反応のようなものです。「自然免疫」と「獲得免疫」の二段構えで体を守っています。異物の侵入時、最初に働くのが、体に生まれつき備わっている自然免疫です。好中球、マクロファージ、NK細胞といった免疫細胞がグループとなって異物を攻撃したり、「サイトカイン」という物質を出して、ほかの免疫細胞に危険を知らせたりします。
自然免疫の知らせにより働くのが、樹状細胞、T細胞、B細胞などの獲得免疫グループです。生まれた後に獲得する免疫機能のため、そう呼ばれています。これまで侵入された経験のある異物が体内に入ってきたときに、抗体を作り出すなどして体を防御します。
―獲得免疫は、いままで侵入された経験のない異物に対しては働かないのでしょうか。
似たような異物が侵入していれば、「交差反応」によって獲得免疫が機能して異物が攻撃され、病原性が弱まったり、重症化リスクを下げたりすることがあります。ただし、なかには過剰に働いてしまい、アレルギーなどの体調不良を引き起こすこともあります。普段は体を守っている免疫も、暴走すると体調を崩すきっかけになることがあるのです。
―免疫の低下はなぜ起こるのか教えてください。
最大の原因は、加齢です。年齢を重ねると、どうしても免疫機能が低下してしまいます。肥満も、免疫を低下させる要因の一つになります。肥満になり、脂肪細胞が肥大した状態になると、その肥大化した脂肪細胞からは、自然免疫によるサイトカインがたくさん放出されます。たくさんの知らせを受けた獲得免疫は、過剰に働き、暴走してしまうため結果的に免疫の低下につながっていきます。
また、生活習慣やストレス、疲労、睡眠不足、そして暴飲暴食による腸内環境の乱れも免疫を低下させる原因になります。
―免疫を高めるにはどのようにすれば良いのでしょうか。
免疫低下の原因は、加齢を抜かせばすべて生活習慣にかかわることです。そのため、睡眠をしっかりとり、食事はバランス良く、腹八分目を心掛ける、ストレスをためない、運動不足を防ぐといった生活習慣の改善が重要となります。しかし、こうした基本的なことを整えるのが意外に難しいと感じる人は多いでしょう。―取り組みやすいポイントがあれば教えてください。
二つのポイントを押さえておきましょう。一つめは、腸内環境を整えることです。「免疫細胞の7割は腸にいる」といわれます。ビフィズス菌や乳酸菌などの、「善玉菌」と呼ばれる腸内細菌がきちんと働けるよう、食物繊維の多い食品を食べたり、善玉菌そのものを摂取したりして、免疫が働きやすい環境を整えましょう。もう一つのポイントは、自律神経を整えることです。自律神経を整えることで、ストレスによるダメージの軽減や睡眠、血流など、免疫にかかわるさまざまな要素の改善が期待できます。
自律神経は、呼吸をひと工夫すると整いやすくなります。患者さんによく紹介しているのが、3秒間かけて鼻から息を吸い、6秒間かけて口から吐いていくという「1対2の呼吸法」です。続けるとリラックスできて、自律神経がバランス良く働くようになっていきます。寝る前や起きてすぐなどに2~3分間、タイミングを決めて毎日行うと効果的です。
腸内環境と自律神経を整えて、免疫を高め、体を守る好循環を作り出していきましょう。
負担の少ない安全な医療を提供し、多くの人のQOLの向上をめざしたい 小林メディカルクリニック東京は、「身体に負担のかからない安全な医療をめざす」ことを掲げ、2006年に東京・新宿に開院しました。赤坂への移転後は、内科、皮膚科、アレルギー科を中心に、スポーツ医学、予防医学、アンチエイジング医学といった専門外来、さらには人間ドックまで、幅広い疾患やケガに対応した診療と検査を行っています。順天堂大学を始めとする医療連携を充実させるとともに、大学や公的機関、企業との医療研究にも取り組み、「そもそも病気にならない身体と心をめざす医療」の実現をめざしています。健康管理の推進により、多くの方がQOLを保ちながら尊い命を全うするための理想的なモデルクリニックとして機能すること、それが同院の目標です。 医療法人社団順幸会 小林メディカルクリニック東京 [診療科目]内科、皮膚科、便秘外来、自律神経外来、コロナ後遺症外来、漢方外来、その他
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