不妊治療の専門医が伝えたい 〝卵子の真実〟と卵巣予備能検査

妊娠するために大切な「卵子」。ところが卵子について、きちんとした知識を持っている人は多くありません。今回は不妊治療の専門医・浅田義正先生に、卵子の正しい知識や「卵巣予備能(AMH)」についてうかがいました。


浅田レディース品川クリニック
院長 浅田 義正 先生

名古屋大学医学部卒業。同大学医学部附属病院にて不妊治療に携わった後、米国でICSI(顕微授精)の研究に従事。帰国後、精巣精子を用いたICSIで日本初の妊娠例を報告。2004年、愛知県に浅田レディースクリニック開院。現在、愛知・東京に3院がある。

―卵子について教えてください。

 毎月、生理が来るたびに細胞が生まれ変わり、新しい卵子が作られると思っている人がいるかもしれませんが、それは大きな誤解です。卵子の〝もと〟となる細胞を「原始卵胞」と呼び、これが作られるのは女性がまだお母さんのお腹にいる、生まれる前の状態のときです。原始卵胞は胎内にいるときに500万~700万個作られた後、生まれたときには約200万個、初潮を迎えるころには約30万個、35歳前後には2万~3万個……と年齢を重ねるにしたがって減っていきます。一生分の卵子のもとがお母さんの胎内にいるときに作られ、その後、増えることはありません。

―卵子と精子にはどのような違いがありますか。

 卵子は一生に一度だけ胎内にいるときに作られ、それが30年、40年と女性の体内で生き続ける、まさに〝神秘の細胞〟です。とはいえ、年齢を重ねた卵子はそのぶん古くなっていきます。老化が進めば受精した卵子でもうまく成長できなくなって妊娠率が下がったり、流産の確率が高まったりします。一方、精子の場合は、常に約3カ月前に作られた新しい細胞ですから、ほとんど老化しません。
 ではなぜ、卵子だけが老化するのでしょうか。それは、女性にとって妊娠・出産は命にかかわる大仕事だから。体への負担がより高まる年代になると自然と妊娠しにくくなるよう、もともと備わっている仕組みといえるでしょう。

―妊娠率の低下には、卵子の老化だけでなく数も関係するのですか。

 妊娠するためには、卵子の「質の良さ」とともに「数の多さ」も重要な要素です。質については年齢が若い方が良好ですが、卵子の数には個人差があり、年齢では測れません。それを知るために近年注目されているのが、「卵巣予備能(AMH)」検査です。
 卵巣予備能とは、卵巣に残されている卵子の数の目安のこと。AMHはアンチミューラリアンホルモンの略で、発育過程にある卵子(卵胞)から分泌されるホルモンです。このホルモンの値を測ることによって、卵巣にどれくらいの卵子が残されているかを推測することができます。

―AMH検査について、具体的に教えてください。

 AMH検査は、現在最も信頼できる卵巣予備能の検査といわれています。保険適用外なので自費となりますが、簡単な血液検査で所用時間は20分ほど※。月経周期によって大きく変化する女性ホルモンとは異なり、AMHはそれほど変化がないため、月経周期を気にせずいつでも受けられます。
 ただ、この検査は、AMH値が低い=妊娠率が低いことを示すわけではありません。AMH値がほとんどゼロに等しい人でも、妊娠・出産している人は大勢います。問題は、不妊治療をするときに受精に利用できる卵がどれくらい残されているかどうか。それを判断するときに指標となるのがAMH検査というわけです。

―いまは妊娠を考えていない人でも、検査を受けるメリットはありますか。

 妊娠に年齢的な制約があることはよく知られていますが、残されている卵子の数は年齢に関係がないうえ、自分では気付くことができません。その意味でも、私は30歳を目安に、すべての女性にAMH検査を受けることをおすすめしたいと考えています。その時点で何らかの医学的な理由があれば、卵子の老化をストップする卵子凍結などの手段をとることも可能です。また、AMH検査は、婦人科系の不調や疾患の早期発見にも役立ちます。AMH値が高過ぎる場合は、月経異常の原因となる「多嚢胞性卵巣症候群」の可能性が、逆に低過ぎる場合は、卵巣機能が実年齢より早く低下する「早発卵巣不全」の可能性が考えられます。
 女性の生き方はますます多様化していますが、子どもを持つ・持たないの選択は、時間的制約を伴う人生の重要な事柄です。AMH検査に興味のある方、妊娠への不安やお悩みのある方は、ぜひ専門医にご相談ください。

※AMH検査のみの場合、結果は後日郵送となりますので、検査時間は数分(採血時間のみ)です。

最先端設備と心地良い環境作りで「卵」にも「人」にもやさしく 品川駅から徒歩3分。複合オフィスビル内にあるクリニックには診察室、オペ室、相談室などのほか、“施設の要”ともいえる培養室があり、AI搭載のインキュベーターシステムを導入。受精卵を最適な環境で培養しています。さらに大型非常電源を完備するなど災害対策も徹底。最先端の医療対応はもちろん、多くの患者さんが来院される理由は、浅田先生への絶大な信頼にあります。不妊治療の前に必ず行う説明会は、一人ひとりに最適な治療を提供するため。かつてICSI(顕微授精)の患者さん第一号から“幸せ配達人”と呼ばれた経験を持つ浅田先生。熱意のこもったお話しぶりから伝わってくるのは、卵子にも、人にもやさしい医療。まさに「幸せを運んでくれるクリニック」といえそうです。 浅田レディース品川クリニック [診療科目]婦人科(生殖医療・不妊治療)
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