心の健康を守る心療内科 メンタルクリニックって、どんなところ?

新型コロナウイルス感染症の拡大によって生活環境や人間関係に変化が生じるなか、心の不調を訴える人が増えています。そこで今回は、心のケアを専門とする「メンタルクリニック」に注目。実際にクリニックではどのような治療を行っているのか、お話をうかがいました。


ひびきメンタルクリニック 理事長 竹内 今日生ひびき 先生

帝京大学医学部卒業。全国的に臨床を重視した精神科として有名な福岡大学病院にて、思春期から老年期までの神経症性障害、ストレス関連疾患の臨床、研究、教育を行う。同大学医学部精神科助教などを経て、現在、ひびきメンタルクリニック理事長。

―クリニックを初めて受診する患者さんに対しては、どのような流れで診療を行うのですか。

 クリニックによって違いはありますが、初診の場合、まず患者さんに症状や困りごとを問診表に記入してもらい、それをもとに心理士(当院では国家資格を持つ公認心理師)が面談を行います。同時に採血などの内科的検査も実施します。医師が患者さんと対面する際は、面談や検査を踏まえ、心と体を切り分けて診察します。終了まで1~1時間半程度です。

―心と体を切り分けて診るとはどういうことですか。

 実は、心の不調を訴える人のなかには内科的な疾病が原因となっている場合があります。たとえば甲状腺の機能が低下していると、食欲低下、気分の落ち込みなど、うつ病とよく似た症状が出ます。体に不調があって、血液検査を行い調べてみると、体の病気が原因の不安・うつなどの精神症状が見つかる人が1割近くいます。それを見逃さないためにも、内科的疾患に由来する精神症状の可能性を考慮したうえで診察することが重要というわけです。

―オンライン相談のメリットとデメリットを教えてください。

 近ごろ、オンライン上でのカウンセリングが増えています。パソコンやスマートフォンの画面越しに話すので、気軽に利用できる点はメリットです。しかし、たとえばパニック障害などを抱えていて、電車に乗れない、家から出られないという方が「外出せずに済む」という理由だけでオンライン相談を重ねても、問題は一向に解決しません。そのうえ、不適切なアドバイスをしてしまった場合には、患者さんの症状をさらに悪化させるリスクもあります。
 カウンセリングは、カウンセラーとの相性も大切です。オンライン相談は、相性の良いカウンセラーと出会える機会が高まるというメリットもありますから、デメリットを知ったうえで上手に利用するといいでしょう。

―医師とカウンセラーの違いはどこにあるのですか。

 前述した通り、内科的疾患に由来する精神症状の可能性を含めて診断を行い、病気が確定したら適切な薬を処方して症状を改善させるのが医師の役割です。ただ、残念ながらメンタルクリニックにはいまだに「薬漬けにされる」といった悪いイメージが根強く、「薬を一切使わずに治療してほしい」という患者さんもいらっしゃいます。しかし、それは逆効果。適切な投薬治療を受けることで確かな回復が望めます。
 治療によってマイナスの状態にある心をゼロに持っていくのが医師とすれば、心の状態をゼロからプラスへと変換していくのがカウンセラーの役目です。症状が改善した患者さんの言葉にしっかり耳を傾け、原因となっているストレスの除去や対処について、患者さんとともに対策を考えていきます。もちろん、精神科医がカウンセリングを行う場合もありますが、私は双方が連携しあう「チームプレー」で治療に取り組んだほうが真価を充分に発揮できると考えています。クリニック選びに悩んだら、カウンセラー(公認心理師など)がいるかどうかをひとつの基準にするのもいいでしょう。

―クリニックに行くべきか迷ったときの目安を教えてください。

 眠れない、食欲がない、表情が乏しいなどの症状や異変があり、それが1週間以上続いている場合は危険信号といえるでしょう。我慢せず、メンタルクリニックを受診することをおすすめします。
 「心の病」と呼ばれる疾病のなかでも、うつ病などはようやく一般的にも知られるようになりました。それでも「心が弱い人間」といった偏見に苦しんでいる人が大勢います。一方で、最近は気軽に受診される方も増えています。「ちょっと敷居が高くて……」と躊躇している方も、一度クリニックに足を運んでみてください。ほかの病気と同様、心の不調も早期受診が肝心。早期に治療したほうが回復もスムーズです。

町のメンタルクリニックは個人と社会つなぐ“ハブ機能” 亀戸駅から徒歩1分の場所にある「ひびきメンタルクリニック」は、医師9名、臨床心理士10名、看護師からなるスタッフでチーム医療を展開しています。理事長の竹内先生は「生物・心理・社会モデルに基づいた医療」を掲げ、実践しています。また、メンタルクリニックには「個人と社会をつなぐハブ機能」としての役割があるとし、「人間関係が変化しているいま、私たちは現代版の“ご近所さん”のようなもの。不安にさいなまれたとき、遠慮なく話せる存在として活用してほしい」とおっしゃいます。心の状態は自分でも分かりづらいからこそ、専門医の目が必要とされています。同院は的確な診察に加え、一人ひとりに合ったオーダーメイドの診療方針が信頼を集め、多くの患者さんが来院しています。 ひびきメンタルクリニック [診療科目]精神科
[診療時間]月・火・木・金・土 9:30~13:00、14:30~19:00
[休 診 日]水・日・祝日

住所   東京都江東区亀戸6-57-19 丸宇本社ビル 6F
電話番号 03-5628-2201
最寄駅  JR総武線 亀戸駅
URL   https://hibikimental.com/